『肩こり』とは、首から肩や背中にかけて様々な症状を訴える症状名です。
国民生活基礎調査では、15歳~64歳の女性が訴える症状の第1位であり、35歳~64歳の男性でも第2位と報告されており、多くの日本人が悩まされている症状のひとつです。
自覚症状は、首から肩、肩甲骨、背中にかけて『はっている』『こっている』『かたい』『重苦しい』『こわばる』『痛い』『鈍痛』『重圧感』『不快感』『違和感』『こり感』『軽度の痛み』『つらい』などと様々な訴えがあります。
また、頭痛、吐き気、めまい、食欲低下、手のしびれ、不眠、目の症状、胸の締め付け感、のどの症状、自律神経症状などを同時に訴える方も少なくありません。
『肩こり』にはスポーツ、交通事故、パソコンなどの誘因がはっきりしている急性のものと、原因のはっきりしていない慢性のものに分けられます。
また、特別に原因となる疾患がない
『原発性肩こり(本態性肩こり)』と
原因となる疾患により症状があらわれる
『症候性肩こり』があります。
『原発性肩こり(本態性肩こり)』は明らかな原因がないのが特徴であり、不良姿勢・過労・ストレス・睡眠不足・運動不足・冷えなどにより症状があらわれます。
『症候性肩こり』は、頚椎や肩関節周辺の骨・関節・筋肉等の運動器系の疾患により症状があらわれます。
その他にも内科疾患(循環器疾患・消化器疾患・脳疾患など)、眼科疾患、耳鼻科疾患、歯科疾患、精神神経科などの関連した症状としてもあらわれることも多いため、様々な病気も念頭に入れ十分な問診と全身をよく診察することが必要となります。
『肩こりの治療』は、その原因となるものを的確に診断し、それぞれの原因に応じた治療を行うことが重要です。しかし、『症候性肩こり』の症状はひとつの科に絞り込むのは難しく、十分に鑑別を行い、場合によってはそれぞれの担当科に診断を仰ぐ必要もあります。
症状に対する具体的な治療は、
『運動療法』
首や肩周囲の筋(僧帽筋・肩甲挙筋・菱形筋・大胸筋など)のストレッチ(筋の伸長)や筋力強化、筋リラクゼーション(筋の弛緩)に加え全身運動も行います。
『マッサージ療法』
力学的な作用を生体に与え、皮膚、筋肉、神経、血管などに機械的刺激を加え、血行促進、筋肉の緊張の緩和、鎮痛などの目的で行います。
『物理療法』
温熱、電気、力学的な負荷などの物理エネルギーを用いて、血流の増加、筋肉の緊張の緩和、鎮痛、組織修復の促進などの目的で行います。
『温熱療法』
物理療法のひとつであり、熱エネルギーを利用し、血管を拡張させ血流をよくすることで、筋肉の緊張や疼痛の緩和、代謝亢進などの効果が期待できます。
『装具療法』
急性期の首の安静を保ち、首の運動に伴う症状の増悪軽減の目的で行います。
『その他』
日常生活指導・運動指導・薬物療法・注射療法など
※誤った方法のマッサージ、体操、ストレッチなどをおこなうと、筋肉や関節、神経を痛めてしまい、かえって症状を強くしてしまうこともあります。専門家に相談し、よくアドバイスを受けた後に適切な改善方法をとることをお勧めします。
骨・関節・筋肉等の運動器系の疾患
① 脊柱疾患
頚椎症・椎間板ヘルニア・変形性頚椎症・
頚肩腕症候群・頚椎捻挫(むちうち損傷)・
後縦靭帯骨化症・炎症性疾患(化膿性脊椎炎
・結核性脊椎炎など)・頚椎骨腫瘍・脊髄腫瘍
など
② 胸郭出口症候群
③ 肩関節疾患
動揺性肩関節(ルーズショルダー)・
肩関節周囲炎・関節拘縮・腱板炎・腱板損傷・
変形性肩関節症・上腕骨骨腫瘍・肩甲骨骨腫瘍
など
④ 顎関節症
内科疾患
① 循環器疾患
高血圧・貧血・狭心症・心筋梗塞・
解離性大動脈瘤・動脈炎症候群など
② 消化器疾患
胃疾患・十二指腸疾患・肝臓疾患・
胆のう疾患・膵臓疾患など
③ 呼吸器疾患
胸膜炎・肺尖部腫瘍(パンコースト腫瘍)・
横隔膜下腫瘍など
④ その他
筋緊張性頭痛・片頭痛・
リウマチ性多発性筋痛症・皮膚筋炎・
自律神経失調症など
眼科疾患
近視・遠視・眼精疲労など
耳鼻科疾患
中耳炎・メニエール病・耳管開放症・鼻腔炎・
副鼻腔炎など
精神神経科疾患
うつ病・心身症・神経症など
歯科疾患
更年期障害
その他
姿勢異常・めまい・やせ・なで肩・怒り肩・
猫背・側弯症・筋萎縮など