野球肩とは、野球の投球動作のような動きをするスポーツにおいて発生する肩の損傷または使いすぎによる損傷です。
医学的な診断名ではなく俗称として使われる場合がほとんどです。骨、軟骨、筋肉、腱、関節唇、関節包、滑液包、神経など損傷部位、炎症部位により様々な症状があらわれます。
病院などの医療機関では、リトルリーガーズショルダー(上腕骨骨端線離解)、肩峰下インピンジメント症候群、上方関節唇損傷(SLAP損傷)、ベネット損傷、肩甲上神経損傷などと診断されます。
野球肩の症状として、投球時の痛み、動かせる範囲(可動域)の減少、腱板の筋力低下がみられます。
痛みがある場合には一旦、投球を中止し患部の安静をはかります。
その後、症状に合わせ、筋力増強訓練(インナーマッスル強化)、可動域訓練、ストレッチを中心に電気療法等を組み合わせていきます。
保存療法が第一優先になりますが、症状の改善が得られない場合は手術が必要となる場合もあります。
野球の投球モーションは
ワインドアップ期
投球モーションに入り腕を振りかぶった状態
コッキング期
テイクバックが完成するまでの状態
加速期
テイクバック~リリースまでの状態
減速期
リリースからフォロースルーまでの状態
フォロースルー期
腕を振り切った状態
以上の5つに分けられ、どこで障害が発生しているかを見極めることで障害の種類がある程度特定できます。
投球モーションは下半身から体幹へ体重移動で得たエネルギーを肩から鞭のようにしなる腕へと移し最終的にボールに伝える全身運動です。
この一連の動きの中には、全身の関節、筋肉などの組織が関わってきます。特に下半身に柔軟性がなく、体幹の弱い投手は『手投げ』になりやすく、肩や肘に大きな負担がかかります。
このようなことから治療は肩だけを診るのではなく、体全体のバランスを診ることが必要であり選手自身、チーム全体として下半身、体幹の強化と柔軟性を高める事が重要です。
また、野球肩になってしまった選手は全力投球ができない期間や投球禁止期間があるため、「他の選手にレギュラーをとられてしまうのではないか」などいう不安がありますので精神面のサポートも大切です。
予防法としては
・投球フォームの矯正
・1日及び1週間の投球数の制限
・ウォーミングアップ・クールダウンの徹底
・投球後のアイシング
以上のことなどが大切であり、ケガをする選手にはいずれかを怠る選手が多くみられます。
また、野球肩は成長期の野球少年に多くみられます。
ほとんどの選手がスポーツチームに入っており、練習の質や量は指導者に管理されているはずです。
しかし、誤ったフォームでの投球の繰り返しやオーバーユース(使いすぎ)があれば損傷が発生する可能性が高くなります。
|
1日の投球制限 |
1週間の投球制限 |
小学生 |
50球 |
200球 |
中学生 |
70球 |
350球 |
高校生 |
100球 |
500球 |
上記の表はあくまでも目安ですが、限度を超えた場合には1日全力投球をしない日を作る事をお勧めします。
チームの事情にもよりますが、試合を投げられる投手を二人以上用意しておくと、選手への負担も軽減されます。
投球制限については現場の指導者さんから反対意見も多く、様々な意見があります。
また、近年では学年によってより細かな投球制限を設けるという意見もあります。
バドミントン
バレーボール
テニス
やり投げ
水泳(水泳肩)
ハンドボールなど
以上のように、オーバーアーム動作(腕を上から振り下ろす動作)が多いスポーツでも野球肩同様の障害がでることがありますので注意が必要です。